【インタビュー】北海道陶芸協会、会長、下沢敏也氏

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今年50周年という長い歴史の節目の年を迎えた北海道陶芸展。その記念事業として開催した「北海道陶芸の変遷vol.2」は成功裡に終えた。本展を振り返って今の心境を下沢会長に伺った。

ー今回の展覧会のメイン企画「現代陶芸の今」の企画意図を教えてください。

前回の2016年北海道陶芸の変週vol.1の時は北海道陶芸展に歴代関わっていただいた作家や父・土泡と交流があった画家、彫刻家など、北海道で著名な作家の作品や美術館の収蔵品をお借りしたのですが、そういう歴代の展示構成を鑑みて、北海道で現代作家の作品をもっと拡げたいと思ったのが最初です。陶芸での歴史が浅い北海道では国内外で活躍する現代作家の作品に「どういうものがあるのか」を実際に目にする機会が少ない現状の中で、それを北海道で展示できたら一番面白いだろうと思ったのです。第一線で活躍されている現代陶芸の作家が作り上げてきた足跡を一緒に観ていただいて、道内作家や若手作家への刺激になり、育っていってほしいという思いがあります。

ー招待作家はどのようにして決まったのですか。

私や森さん本庄さんと交流のある作家の中から、あまり伝統系に走りすぎない、幅広く現代作家を集めようということと、やはり「北海道陶芸の変遷」なので道内外において活躍する、あるいは道内出身作家など北海道にまつわる作家にお願いしました。私からは川上力三さん、清水六兵衛さん、高橋朋子さん、鲤江明さんのほか、今後を期待する若手作家などです。が、大半は森さんが中心となって各作家さんに声をかけていただいて、128点の招待作家作品を集結しました。

ー札幌芸術の森美術館の展示会場の広さに驚きましたし、見応えがありました。

森さんを始め、展示にご協力いただいた招待作家の皆さん、札幌芸術の森美術館や北海道のキュレーターの方々など、さまざまな方々のお力を借りて展示できました。美術館の前室があれほど広く使われての展示は私も記憶がなく素晴らしい空間でした、が実は展示構成が一番大変でした。一般的に最初は少し狭い空間を入って次の部屋で少し広く、真ん中の辺りで広い空間があるという会場構成が多いのですが、今回は会場を入ってすぐに招待作家の方たちをメインに空間を満たしてインパクトがありました。来訪してくれた数名の作家からも「これだけの作家と作品を一堂に展示できたことが凄い」と。ある意味、北海道だからこそできた展示だったのだろうと思います。

ーワークショップも盛況の様子でした。

板橋廣美さん、高橋奈己さんはふたりとも国際的に活躍する陶芸家で、板橋さんに実演していただいた皿や茶碗の発想が面白かったですし、高橋さんの鋳込み制作もなかなか見る事の出来ない技法なのでとても参考になったと思います。

ー協会創立者の父・故土泡氏から協会を引き継がれたのが2006年頃でした。協会50周年を迎えた今、振り返ってどんなお気持ちですか。

父は人付き合いが好きで、各地に出向いては人との交流を深めながら理解者や愛好者を増やしながら北海道陶芸協会を創立し、北海道に陶芸文化を広めたいという思いで公募展の北海道陶芸展を立ち上げました。一方の私は父の仕事を手伝う傍ら、走泥社の影響を受けて前衛的な作品を制作していて、作家として自分が進むべき道が明確になり、もっと自由にやりたくなって、その方向性の違いから距離を置いた時期がありました。父が亡くなって3年経った頃、当時協会の願問の方から今後の協会運営について相談があり、「こういう話が来るということは父が引き継ぐことを望んでいるのだろう」と思い、公募展経験のない私が46歳頃から協会の仕事に本格的に関わるようになったのです。当時から現在も審査員をしていただいている美術評論家・前会長の奥岡茂雄さん、現代美術家・阿部典英さんや美術評論家(元札幌芸術の森美術館館長)・佐藤友哉さん等は美術の世界に精通している方々で交流も幅広く多方面でアドバイスしていただいています。また今回の北海道陶芸展50周年で協賛をいただいた北海道火災共済協同組合様も今年70周年。その記念事業として特別協賛に入っていただいています。そうした節目の時にさまざまな方々の支えがあって存続できていると常々感謝しています。

―現在その公募展への出品者数が全国規模で減少傾向にあるようです。両展はいかがですか。

コロナで動きが変わってしまい、今年は出品点数が減ったのは確かです。陶芸人口の高齢化もあるでしょう。ただ協会が運営している陶芸教室では体験者が増えています。コロナで我慢していたものが出て「何かやりたい」「自分時間を大切にしたい」という考え方を持つ人が増えたような気がします。

―対策として何か考えはありますか。

応募規定変更等も考えましたがやはり魅力ある展示会にしていく事、公募展に出すことが何か一つ自分の制作意欲に繋がるような企画あるといいなと思います。会場に展示してみることで全然違う見方ができるし、自分の作品が他の人たちの作品中に並んだ時の見え方も違う。公募展はそういう非日常的な空間と違うことを自分で感じることができる場でもあります。

―協会の今後の展望を聞かせてください。

陶芸の産地ではない北海道の中で陶芸を文化事業として成り立たせ、陶芸人口を増やすなど基盤作りの50年だったと思います。会員会友の表現の幅も広がり、近年は特に技術面のレベルが確実に伸びてきています。まずは来年の公募展両展で、再び皆さんに個性豊かな作品を鑑賞していただけるよう陶芸に関心を持つきっかけになる内容にしていきたいと思います。